帰りのバスは、朝ほどは混んでいなかった。
かといってガラガラというわけでもない。
俺の前にバス停に並んでいた女の子たちが空いていた席を取ると、
もう俺の座る場所はなかった。
俺のすぐ前に並んでいた集団は、後部座席のほうでおしゃべりの続きに興じている。
中ほどの座席にも、たぶん一番前に並んでいたのだろう、女の子が一人座り、
鞄を開けているところだった。
もちろん、俺の知らない女の子だ。
髪を短く切りそろえた彼女は、鞄から本を取り出し、ページに視線を落とす。
少女「…………」
すごい美少女というわけでもないけれど、夕陽の差し込むバスの中で本を読む彼女の姿は、
不思議と絵になった。
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